税理士に依頼するメリットと費用の考え方:それは「コスト」か「投資」か?

相続税の申告を税理士に依頼するか、自分でやるか迷う最大の理由は「費用」ではないでしょうか。

「数十万円、場合によっては百万円以上の報酬を払うのはもったいない」と感じるのは当然の心理です。しかし、相続税申告において、この報酬を単なる「コスト(出費)」と捉えるのは危険です。

最終回となる本記事では、税理士に依頼することが結果として「金銭的・精神的なメリット」につながる理由と、費用の正しい考え方について解説します。


1. 「報酬」以上の「節税」効果

税理士に依頼する最大の経済的メリットは、適正な評価による節税です。

第3章でも触れましたが、特に土地の評価は専門知識の有無で大きく変わります。 例えば、評価額5,000万円の土地があるとします。ご自身で簡易的に評価して申告した場合と、税理士が現地調査を行い、不整形地補正などの減額要因を見つけて4,000万円で評価した場合。

この差額1,000万円に対する税率(仮に30%とします)を考えると、税金だけで300万円もの差が出ます。

もし税理士報酬が100万円だったとしても、結果として200万円手元に残るお金が増えることになります。このように、報酬額以上の節税効果が得られるケースは珍しくありません。


2. 「二次相続」まで見据えた遺産分割

相続は一度で終わらないことがあります。典型的なのが、今回お父様が亡くなり(一次相続)、数年後にお母様が亡くなる(二次相続)ケースです。

「今回は『配偶者の税額軽減』を使って、お母さんが全財産を相続すれば税金はゼロだ」

一見、賢い選択に見えますが、これは危険な罠です。なぜなら、次にお母様が亡くなった時、配偶者の特例は使えず、基礎控除額も減るため、子供たちに莫大な相続税がかかる可能性があるからです。

税理士は、一次相続の時点で「次の相続」までシミュレーションを行います。 「今回は少し税金を払ってでも子供が相続した方が、トータルの税金は安くなる」といった、長期的な視点でのアドバイスができるのは専門家ならではの強みです。


3. 税務調査から守る「盾」としての役割

第4章で解説した通り、相続税は税務調査の対象になりやすい税金です。

税理士に依頼し、税理士の署名が入った申告書を提出することは、税務署に対して「専門家がチェックした適正な申告書です」という証明になります。これにより、税務調査のリスクを低減させる効果が期待できます。

また、万が一税務調査が入った場合でも、税理士は納税者の代理人として調査に立ち会います。調査官との専門的なやり取りや交渉を任せることができるため、ご遺族が矢面に立つ精神的なストレスから解放されます。


4. 膨大な事務作業とストレスからの解放

相続発生後は、役所や銀行の手続き、法要の準備などで心身ともに疲弊します。その中で、慣れない税金の計算や、数百枚に及ぶ資料収集を行うのは大変な重労働です。

税理士に依頼することで、戸籍の収集から財産目録の作成、遺産分割協議書の作成、そして申告書の提出まで、面倒な手続きの大半を丸投げできます。

「お金で時間を買う」ことで、故人を偲ぶ時間や、ご自身の日常を取り戻すことができる点も、見逃せないメリットです。


5. 費用の考え方:安心を買う「保険」

税理士報酬の相場は、一般的に「遺産総額の0.5%〜1.0%程度」と言われています。決して安い金額ではありません。

しかし、自分で行った結果として、

  • 土地の評価ミスによる「過大納税(払いすぎ)」
  • 申告漏れ指摘による「加算税(罰金)」
  • 特例適用のミスによる「高額な税負担」
  • 税務調査への恐怖とストレス

これらのリスクを回避するための「必要経費」あるいは「保険」と考えれば、決して高い投資ではないはずです。


6. まとめ:まずは見積もりで判断を

相続税申告は、一生に何度も経験するものではありません。だからこそ、失敗が許されない手続きでもあります。

「自分でできる範囲なのか、プロに頼むべき複雑な案件なのか」 「依頼した場合、どれくらいの節税が見込めて、費用はいくらかかるのか」

これらを判断するためにも、まずは専門家に相談し、見積もりを取ることから始めてみてはいかがでしょうか。それが、ご家族の大切な財産を守る第一歩となります。


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