外資系企業にお勤めの方へ。RSAとRSUの違いと、日本における「株式報酬」の税務トラップ

外資系企業やグローバルスタートアップにお勤めの方にとって、自社の株式を報酬として受け取る「エクイティ報酬(株式報酬)」は、大きな資産形成のチャンスです。

しかし、本国の親会社から英文の契約書で付与されるこれらの報酬は、略語が多く非常に複雑です。中でもよく混同されるのが「RSA(譲渡制限付株式)」と「RSU(譲渡制限付株式ユニット)」です。

本記事では、この2つの制度の決定的な違いと、「日本の居住者として、日本の税制でどう申告すべきか」という最も重要なポイントを解説いたします。

1. RSAとRSUの仕組みの違い

どちらも「譲渡制限付」という名称ですが、株式を受け取るタイミングと条件に大きな違いがあります。

RSU(譲渡制限付株式ユニット)とは?

〜現在、多くの外資系企業で主流の制度〜

RSUは、最初に株式をもらうのではなく、「将来、一定の期間勤続するなどの条件(ベスティング要件)を満たしたら、株式を付与します」という約束(ユニット)です。

  • 特徴: メガベンチャーや大手外資系企業でよく用いられます。付与された時点では株式を所有していないため、株主としての権利(議決権や配当)はありません。
  • 退職時: 権利が確定(ベスト)する前に退職した場合、未確定のRSUは直ちに無効となり消滅します。

RSA(譲渡制限付株式)とは?

〜スタートアップ企業でよく見られる制度〜

RSAは、付与された時点で「実際の株式」を(無償または一定の価格で)取得します。ただし、「一定期間は売却できない」などの強い制限がついています。

  • 特徴: 今後株価が大きく上昇することを見込んでいるアーリーステージのスタートアップでよく用いられます。
  • 退職時: 制限期間中に退職した場合、会社は未確定の株式を買い戻す(または没収する)権利を持ちます。

2. 【要注意】日本における税金の取り扱い

ここからが本題です。本国(米国など)の人事資料や解説記事を読むと、現地の税制に基づいた説明がされていますが、日本の居住者である以上、日本の税法に従って「確定申告」を行わなければなりません。

外資系企業にお勤めの方が陥りやすい税務トラップを解説します。

RSUの税金:現金をもらっていないのに「給与所得」になる

RSUは、権利が確定(ベスト)し、実際に株式を受け取ったタイミングで「給与所得」として課税されます。

  • トラップ①: 株式を受け取っただけで売却(現金化)していなくても、その時点の時価(為替レート換算)で給与所得が計算され、最高55%(住民税含む)の税率がかかります。
  • トラップ②: 外国の親会社から直接株式が付与される場合、原則として日本での源泉徴収が行われません。つまり、会社任せにせず、ご自身で毎年確定申告を行い、納税資金を確保しておく必要があります。(※一部、Sell-to-Cover等で源泉徴収相当額を自動売却する制度を導入している企業もあります)
  • その後、株式を売却した際の利益(売却額と権利確定時の時価との差額)は、「譲渡所得(約20%の分離課税)」として別途申告が必要です。

RSAの税金:「制限が解除された日」の時価で課税される

RSAは付与された時点で株式を受け取りますが、自由に売却できない制限がついています。日本の税制においては、この「譲渡制限が解除された日(自由に売却できるようになった日)」の時価をもとに、給与所得として課税されます。

  • トラップ: 本国の人事向けマニュアルには「付与時に課税を済ませておく方法」など、海外特有の税制が解説されていることがありますが、日本の税法には適用されません。英文のマニュアルをそのまま鵜呑みにすると、日本での申告漏れを指摘される恐れがあるため注意が必要です。

3. 外資系企業の株式報酬は「事前のシミュレーション」が必須

RSUやRSAは、株価の上昇と為替(円安など)の恩恵を受けることで、数千万円〜億円単位の莫大な利益をもたらすことがあります。

しかし、それに伴う税金も多額になります。「株を売っていないのに、翌年の確定申告で数千万円の納税を求められた」という事態を防ぐためには、権利確定のスケジュールを把握し、事前に円換算での納税額をシミュレーションしておくことが不可欠です。

おわりに

外資系企業の株式報酬は、契約内容や付与された時期、親会社の所在国によって税務上の取り扱いが複雑に変化します。

「本国のマニュアル通りに処理してしまった」「申告が必要だと知らなかった」では済まされないケースが増加しておりますので、権利確定や売却を控えている方は、お早めに税務の専門家へご相談ください。

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